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ワクチン接種プログラムについて
以前、同様のタイトルの投稿を致しましたが、時間の経過とともに内容が少し変わりましたので、現在のワクチン接種プログラムについてご紹介いたします。
WSAVA(世界小動物獣医師会)から犬と猫のワクチン接種ガイドライン2015年版が発表され、世界のワクチン接種プログラムは変わりつつあるようです。当院のワクチン接種プログラムも、このガイドラインを参考にしながら、国内で入手出来るワクチンの種類や当院での検査結果の傾向等を考慮し決定しています。今後、新しい知見や、入手出来るワクチンが変わることでその内容は都度変更されていくとは思いますが、現在のワクチン接種プログラムでは、抗体検査を活用することで、今までのワクチン接種の頻度が減ったり、ワクチンの種類が変わったりする可能性があります。
1、抗体検査とは
感染防御の際に重要な役割を持つ抗体(免疫グロブリン)と呼ばれる蛋白質を検出する検査です。主に、子犬・子猫期のワクチン接種終了後に免疫がきちんとついているか否か、成犬・成猫に対してワクチンの追加接種が必要か否かの判定に用います。
2、犬のワクチン接種プログラム
現在、主として5種、7種、10種そして4種(レプトスピラのみ)ワクチンを用意しています。これらを、個々の生活環境に応じて選択して接種しています。
①子犬の場合
生後2ヶ月齢程度から2〜3回(3回目は16週齢以降)ワクチンを接種し、さらに1年後にもう1度ワクチンを接種します。最後の接種から4週間以降に抗体検査を実施します。抗体が十分と判定された場合は、以後5種のワクチンであれば3年毎に接種し、7種または10種のワクチンであればこれらを3年毎に、その間はレプトスピラのみの4種ワクチンを毎年接種します。
当院では、0歳時のワクチン接種のみの犬や猫では抗体が不十分となる結果が出やすい傾向があったため、1歳齢でもう1度ワクチンを接種してから抗体検査を実施しています。
②成犬の場合
・ワクチンを定期的に接種していることが分かっている場合
抗体検査を実施し、抗体が十分であれば上記1歳齢以降の犬同様の接種プログラムとなります。
・ワクチン接種歴が不明、もしくは3年以上接種していない場合
まず5、7、10種のいずれかのワクチンを接種し、4週間以降に抗体検査を実施します。抗体が十分であれば、以後は上記1歳齢以降の犬同様の接種プログラムとなります。
3、猫のワクチン接種プログラム
当院では、現在のところ3種、5種のワクチンを用意しています。これらを、個々の生活環境に応じて選択して接種しています。
①子猫
生後2ヶ月齢程度から2〜3回(3回目は16週齢以降)ワクチン(※1)を接種し、さらに1年後にもう1度ワクチン(※1)を接種します。最後の接種から約4週間後に抗体検査(パルボウイルスのみ)を実施します。抗体が十分と判定された場合は、以後、感染リスクが低い室内1頭のみの飼育の場合は3年毎に3種ワクチンを接種しますが、感染リスクが高い(※2)と考えられる生活環境の場合には基本的に3種もしくは5種ワクチンを毎年接種します。
(※1) 猫白血病ウイルスへの感染は、1歳までの子猫では高い確率で持続感染(感染が成立)することが知られています。一方、1歳以降の成猫では、持続感染はほとんど成立しないことが知られていますので、生活環境によって0歳と1歳の時のワクチンは猫白血病が含まれている5種のワクチンが3種ワクチンより推奨される場合があります。
(※2) 感染リスクが高いとは、次のような場合を考えています。
・自宅で複数頭猫を飼育している。
・ペットホテルをよく利用する。
・外に出る。
5種ワクチンを接種する場合には、接種前に猫白血病に感染していないことを確認する必要があります。
②成猫
・ワクチンを定期的に接種していることが分かっている場合
抗体検査を実施し、抗体が十分であれば上記1歳齢以降の猫同様の接種プログラムとなります。
・ワクチン接種歴が不明、もしくは3年以上接種していない場合
まず3種もしくは5種ワクチンを接種し、約4週間後に抗体検査を実施しします。抗体が十分であれば、以後は上記1歳齢以降の猫同様の接種プログラムとなります。
4、留意事項
この接種プログラムを実施することで、多くの子は、ワクチンの接種回数を減らすことができると考えていますが、以下の点には十分留意して下さい。
- ワクチンは感染症予防に最も有効な方法ですが、100%の感染予防を保証するものではありません。
- 極めて稀ではありますが、ワクチン接種により命に関わるようなアレルギー反応などの副作用が生じる場合があります。
- 製薬会社の新たなワクチンの開発や新たな知見の集積等により、都度、このワクチンプログラムは変更される可能性があります。
- ペットホテルやトリミング店では、施設利用の為に毎年の予防接種を条件としている施設もあります。当院では、予防接種証明書や抗体検査結果票は、接種や検査の都度飼い主さまにお渡し致しますが、それら施設に対しての獣医学的な説明等は行っておりません。
- ワクチン接種間隔が長くなる為、定期的な健康診断がおろそかになることが懸念されます。年1回は健康診断をしてあげることをお勧めします。
ワクチン接種プログラムは上記のように個々の生活環境等で変わり複雑ですので、詳しくは病院でお尋ね下さい。