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育毛剤(ミノキシジル)はペットに危険
皆さんは、リアップやスカルプDという育毛剤はご存知でしょうか。これらの育毛剤にはミノキシジルという薬が使われています。
ミノキシジルは1965年に降圧薬として開発されました。血管平滑筋のATP感受性Kチャネルというものを活性化することで血管平滑筋が緩み血管が拡張することで血圧が下がります。
そして、この降圧剤を使用した患者さんに毛が増えるケースが認められたことから育毛剤としての開発が進みました。毛が増える理由についてははっきりとはしていないようですが、毛根など局所の血流増加によるものと言われています。
ちなみに、効果は男性より女性が、薄毛になってから10年以上より10年未満が、また薄毛の面積が直径10cm以下の方が効果を期待できるそうです。米国の臨床検査では著効した患者さんは0.3%、少しでも効果があった患者さんは30%ということです。
このミノキシジルという薬ですが、以前から犬や猫に毒性がある報告はありました。犬に2日間ミノキシジルを投与しただけで、頻脈や低血圧、心内膜の出血や壊死がみとめられたとの報告もあります。そして、最近少しまとまった報告がなされました。
これによると、犬や猫ではほんの一滴なめただけでも死亡することがあるとのことです。特に猫の方が重篤化するケースが多いようです。育毛剤を頭皮につけ、夜寝ているときに飼い猫がやってきて頭を舐めたり、使用した枕カバーをなめたりして発症したケースや、使用時に飛んだ育毛剤のしずくを舐めたり、育毛剤を使用した手を拭いた紙などを犬が誤食して発症するといったケースも報告されています。
この報告では、本症状に対する治療法は記載されていませんが、治療は対症療法にならざるを得ないと思われます。グリベンクラミドという糖尿病の薬(前述のATP感受性Kチャネルの活性化を阻害する作用がある)とミノキシジルを併用すると毒性が出にくいという報告もありますが、ミノキシジルによる毒性が出た後では効果はないと思われます。
犬や猫に毒性のある薬は色々ありますが、ことミノキシジルに関しては、たった一滴、ひと舐めでも中毒になるということですので、より注意が必要な薬です。
これから寒い季節になり、ご自宅のワンちゃんやネコちゃんが、布団の中に潜ってきたりすることもあると思います。ミノキシジルの含まれた薬を使用されている方は十分に注意されて下さい。
【参考文献】
- Kathy C Tater, Sharon Gwaltney-Brant, Tina Wismer. Topical Minoxidil Exposures and Toxicoses in Dogs and Cats: 211 Cases (2001-2019). J Am Anim Hosp Assoc. 2021 Sep 1;57(5): 225-231
- Tater KC, Gwaltney-Brant S, Wismer T. Dermatological topical products used in the US population and their toxicity to dogs and cats. Vet Dermatol 2019;30(6):474–e140.
- Mesfin GM, Robinson FG, Higgins MJ, et al. The pharmacologic basis of the cardiovascular toxicity of minoxidil in the dog. Toxicol Pathol 1995; 23(4):498–506.
- Jordan TJM, Yaxley PE, Culler CA, et al. Successful management of minoxidil toxicosis in a dog. J Am Vet Med Assoc 2018;252(2):222–6.
- DeClementi C, Bailey KL, Goldstein SC, et al. Suspected toxicosis after topical administration of minoxidil in 2 cats. J Vet Emerg Crit Care 2004;14(4): 287–92.