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犬の胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)
1、はじめに
肝臓に水風船のようにぶら下がる胆嚢という袋があります。この袋に起きる胆嚢粘液嚢腫と呼ばれる病気をご存知でしょうか?無症状であることもありますが、嘔吐、食欲不振などの症状を起こしたり、胆嚢炎、胆管炎、膵炎、腸炎、肝炎などの原因となったりすることがあります。また、胆管の閉塞による黄疸や胆嚢破裂による腹部痛など重篤な症状を伴うこともあります。
今回は、胆嚢粘液嚢腫が原因で胆管閉塞となり胆嚢摘出を行うケースがありましたので、この病気のお話をしたいと思います。
2、胆嚢粘液嚢腫とは
胆嚢粘液嚢腫とは、その名の通り胆嚢の中に粘液状の物質が溜まってしまう病気です。中〜高齢の犬に発生が多く、猫ではまず認められません。シェルティーやシュナウザーでの報告が多いですが、その他の犬種でも見られます。胆嚢の粘膜壁の異常が原因のようですが、はっきりとした発生要因は現在のところ不明です。お腹のエコー検査で確定診断できますので、健康診断の時に偶然発見されるケースが多いと思います。
個人的には、粘液嚢腫の胆嚢はピータンのように見えます。返って分かりにくいでしょうか。。。一般にオウムには胆嚢がありますが、インコにはありません。
3、症状は
粘性物が溜まるだけでは明らかな症状は認めないことも多いのですが、胆管が閉塞したり胆嚢が破裂したりした場合の症状は、黄疸、頻回嘔吐、食欲不信、活動性の低下、発熱、腹部痛、脱水など様々です。ただし、黄疸の程度は様々で、肉眼でははっきりとせず、血液検査で黄疸(ビリルビン値の異常)が分かる場合もあります。
4、治療は
胆嚢粘液嚢腫を認めるだけで無症状の場合は、利胆剤や低脂肪食などによる内科的な治療もされますが、胆嚢壁の異常によるものですので、改善するケースは多くはありません。胆嚢を取ってしまう手術が完治させる確実な方法です。しかし、最終的に胆管閉塞や胆嚢が破裂しない限りは、はっきりとした症状が認められないことが多いので、手術を行うタイミングが難しい病気です。手術は何も症状が出ていない元気な時にするのが最も成功率が高いのですが、症状がないワンちゃんのお腹を切りますと言っても、なかなか決断できないと思います。基本的には、
①定期的な検査で胆嚢がどんどん大きくなる場合
②胆管閉塞が生じた場合
には、手術をする必要があると考えています。①の場合には主な症状は見られないことが多いですが、胆嚢破裂を起こすと予後が非常に悪くなるので、ぜひ、今日明日のことではなく、数年後も元気で一緒に暮らせることを考えて、手術に向き合って頂けたらと思います。